酒販免許の取得を考えている人
「酒販免許のことを調べていたら土地と建物が自己所有ではない場合、賃貸借契約書が必要という情報を見つけた。具体的にどういうことか教えてほしい…。」
このような疑問・お悩みにお答えします。
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目次
まずは要件の確認
酒販免許を取得する場合には、「要件」という免許を取るためにクリアしなければならない条件のようなものがあります。その中の一つに「販売場の使用権限があること」が挙げられます。手引きに直接記載はありませんが、具体的な根拠は「酒税法施行令」「酒税法施行規則」によって記載されています。
(酒類の販売業免許の申請)
第十四条 法第九条第一項の規定により酒類の販売業免許(同項に規定する販売業免許をいう。以下同じ。)を受けようとする者は、当該販売業免許を受けようとする酒類の販売業又は販売の代理業若しくは媒介業(以下「販売業」と総称する。)の区分の異なるごとに、次に掲げる事項を記載した申請書を当該税務署長に提出しなければならない。
一 申請者の住所及び氏名又は名称
二 販売場(継続して販売業をする場所をいう。以下同じ。)の所在地及び名称
三 販売しようとする酒類の品目、範囲及びその販売方法
四 博覧会場、即売会場その他これらに類する場所で臨時に販売場を設けて酒類の販売業をしようとする者にあつては、その旨及び販売業をしようとする期間
五 その他財務省令で定める事項
2 前項の申請書には、申請者が法第十条第一号から第八号までに規定する者及び破産者で復権を得ていない者に該当しないことを誓約する書面その他財務省令で定める書類を添付しなければならない。
(酒類の販売業免許の申請書の記載事項等)
第七条の三 令第十四条第一項第五号に規定する財務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 販売場(継続して販売業をする場所をいう。以下同じ。)の敷地の状況及び建物の構造を示す図面
二 事業の概要
三 収支の見込み
四 所要資金の額及び調達方法
五 酒類の販売管理に関する事項
六 その他参考となるべき事項
2 令第十四条第二項に規定する財務省令で定める書類は、次に掲げる書類とする。
一 申請者の履歴書及び住民票の写し又はこれに代わる書類(法人にあつては、役員の履歴書並びに定款の写し及び登記事項証明書)
二 販売場の土地又は建物が自己の所有に属しないときは、賃貸借契約書の写し又はこれに代わる書類
三 地方税の納税証明書
四 貸借対照表及び損益計算書又はこれらに準ずる書類
五 その他参考となるべき書類
したがって、これから酒販免許を始める場合には、販売をする場所の使用権限があるかどうかを確認するための資料(賃貸借契約書など)を提出することが求められます。
自己所有とは?
ところで、規則に出てきた「自己の所有に属しないとき」とはどういうことでしょうか?簡単に言うと、当該土地建物の「登記事項証明書」(法務局で発行される書類)の所有者の欄に自分の名前が記載されてる状態が自己所有、そうでない場合は自己所有じゃない、ということになります。
登記事項証明書の欄を確認していただき、自分の名前があればそれでOKですが、自分の名前でない場合は通常は「賃貸」に該当すると思われますので、賃貸借契約書等を交わしていると思います。
賃貸借契約書とは?
「賃貸借契約書」とは、賃貸借契約を締結した際にその契約を証するための書類のことです。アパートやマンションを借りたことがある方はご存じかと思います。
酒販免許を取得の際に注意していただきたいのは賃貸借契約書の「(使用)目的」の項目です。法人の場合、物件を借りる場合は通常「事業を行うため」とか「〇〇業を行うことをその目的とする」などと記載があると思います。
酒販免許の申請の際には、この目的の箇所に「酒類販売業を行うことを目的とする」というような内容がうかがい知れることが求められます(「うかがい知れる」と書いたのは、直接「酒類販売業」という文言でなくてもOKの場合があるからです)。
賃貸借契約書に代わる書類とは?
仮に賃貸借契約書をとり交わしていない場合には、それに代わる書類を添付することになります。具体的には「使用承諾書」になります。
使用承諾書には「○○(所有者)は△△(借主)に対し、下記記載の物件を使用することを承諾する。」という内容の書類です。
「土地」の賃貸借契約書がない!
ところで、みなさんはビルのテナントを借りたり、アパート・マンションを借りたりする際に「土地」の賃貸借契約を締結したことはあるでしょうか?おそらく、ほとんどの方が「ない」と答えるのではないでしょうか?
ビルの一画やアパート・マンションの一室のように、いくつかの部屋が集合している建物を借りる場合は土地の賃貸借契約を締結しないことがほとんどです。
そこで、このような場合は土地の賃貸借契約書がないため、使用承諾書を添付することが求められています。
【小言】(読み飛ばしてOKです)
ところで、少しおかしな話だと思いませんか?
そもそも、このような場合、土地の権利主体ではないのになぜ使用承諾書という契約の主体となり得る書類を新たに作成しなければならないのでしょうか?もちろん、その土地上で酒類販売を行ってはならないという土地所有者がいるかもしれないし、そういったトラブルを避けるためという趣旨はよくわかります。
しかし、例えば法人向けのオフィスビルを考えていただきたいのですが、そもそもビル(建物)オーナーは各借主に「事業用」として貸しているのであって、土地所有者もそれをわかって建物所有目的の賃貸借契約を締結しています。また、土地所有者はいちいちテナント契約者との間で「うちの土地使っていいですからね」という契約を結ばないですよ。だって、そもそも契約主体じゃないですから!
そう。つまり、今の酒税法施行規則の条文から言うと、権利主体じゃない者同士で使用承諾書をかわせということになります。
そして、あなたがもし土地の所有者で、その土地の上に別の人のオフィスビルが建っているとします。そのビルの一室をテナントとして借りているという人がある日「土地の使用承諾書をください」と言ってきたときに即「OK」と言いますか?関係性ができているならばそう言うかもしれませんが、そもそも土地を貸していない人に対して使用承諾書を書きます?(弊所実績からほとんど場合、土地オーナーが無知のため、迷いなく承諾書を書いてくれていますが…)
まとめ
以上、土地と建物が自己所有じゃない場合の対処法について解説してきました。販売場の土地建物が自己所有じゃなくても取得可能です!
基本的には賃貸借契約書がベースとなり、「目的」欄を確認し、場合によっては使用承諾書で対応するという流れになります。ただし、使用承諾書をもらいに行ったところ土地所有者とモメたため、泣く泣く別の場所で申請し直したというケースも実際にあります。普段からオーナーさんとの関係性を築くことが大事です。
【記事の執筆者】
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