一人親方(個人事業)でも建設業許可を取得する方法を徹底解説!

個人事業主や一人親方でも建設業許可は取得できます。この記事では、個人事業主・一人親方が建設業許可を取得する方法を徹底解説しています。

個人事業主や一人親方が建設業許可を取る方法、許可をとるメリット・デメリットは?法人成した場合はどうなる?等、わかりやすく解説しています。

建設業許可とは?

そもそも建設業とは、元請、・下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負うことをいいます。建設業は工事の種類ごとに29業種に分かれています。

29業種とは、土木一式工事建築一式工事大工工事左官工事とび・土工・コンクリート工事石工事屋根工事電気工事管工事タイル・れんが・ブロツク工事鋼構造物工事鉄筋工事舗装工事しゆんせつ工事板金工事ガラス工事塗装工事防水工事内装仕上工事機械器具設置工事熱絶縁工事電気通信工事造園工事さく井工事建具工事水道施設工事消防施設工事清掃施設工事解体工事です。

建設業を営もうとする者は、下記に掲げる軽微な工事を除いて、29業種の建設業の種類(業種)ごとに、国土交通大臣又は都道府県知事の許可を受けなければなりません。

「建築一式工事」で右のいずれかに該当するもの・1件の工事代金が1,500万円未満の工事(消費税を含んだ金額)
・請負代金の額に関わらず、木造住宅で延床面積が150㎡未満の工事(主要構造部が木造で、延べ床面積の1/2以上の居住の用に供すること。)
建築一式工事「以外」の建設工事1件の請負代金が500万円未満の工事(消費税を含んだ金額)

簡単にいうと、1件の工事請負代金が500万円(建築一式工事の場合1,500万円)以上の工事を請け負う場合には建設業の許可が必要となります。

逆にいうと、500万円未満の工事しか請負わなければ建設業許可は不要となります。

個人事業と一人親方の違いは?

一人親方も個人事業主なので、何が違うのか?と思われるかもしれませんが、それほど大きな違いはなく、イメージが少々違うだけです。

個人事業主には、たった一人で事業をしている個人事業主もいれば、従業員を数名雇い入れている個人事業主の方もいらっしゃいます。

この「たった一人で建設業をしている方」を一人親方と呼ぶのが通例です。 厳密に一人親方とはこういう人だ、という定義はないのですが、国交省のガイドラインで、一人親方の基本姿勢として「請け負った工事に対し自らの技能と責任で完成させることができる現場作業に従事する個人事業主」とあることから、自分で施工して完成させる個人事業主を一般的には「一人親方」と呼ぶと解釈できます。

個人事業主(一人親方)が建設業許可をとるメリット

  1. 500万円以上の工事を請け負えるようになる
  2. 元請会社や銀行からの信用が増す
  3. 法人よりも許可申請手続きが簡単

それでは一つずつ見ていきましょう。

500万円以上の工事を請け負えるようになる

建設業許可を取得すると、請負金額が500万円以上の工事を請け負うことができるようになります。

「工事は受注しているけど、なんか手元にお金が残らない気がする」という一人親方や個人事業主の方がいらっしゃいます。このような方は人工や手間受けで仕事を受注しているケースが多いです。人工出しや手間受けは労働の対価分しか支払われないため利益を残せません。

ですので、建設業の許可を取得して受注の仕方を請負いにすることで利益の上乗せができるようになります。 また、建設業許可を取得すれば経審を受審し入札参加することも可能ですので、民間工事にとどまらず、公共工事の受注の可能性も広がります。

元請会社や銀行からの信用が増す

元請け会社からすれば、建設業許可を持っていない業者は、500万円未満の工事しか発注できないので、元請け会社と良好な関係を築いていながらも発注しづらいというデメリットがあります。こうした発注者側のデメリットに配慮して建設業許可を取ることで元請会社との信頼関係が増します。

また、新規取引が始まるときにも、建設業許可を取得していれば、経営面や技術面の要件を一応クリアしている業者として認識されるので信用材料となります。 さらに、金融機関から資金調達する場合も、建設業許可を取得していれば金額の大小問わず受注できる業者であると認識されるため信用が増します。

法人よりも許可申請手続きが簡単

一人親方(個人事業)での申請の場合、法人特有の書類(履歴事項全部証明書、定款の写し、社会保険加入確認書類等)がないため、法人と比べて手続が簡略化できます。 また、法人設立の際には、会社の印鑑作成代、資本金の準備、定款認証手数料、登記の登録免許税、法人税の支払いなどの費用がかかりますが、個人事業の場合、これらがかかりません。この点では、一人親方(個人事業)で建設業の許可申請をすれば、経費を抑えることができます。

個人事業主(一人親方)が建設業許可をとるデメリット

  1. 500万円以上の工事を請け負えるようになる
  2. 元請会社や銀行からの信用が増す

それでは一つずつ見ていきましょう。

許可取得や更新等、許可の維持費用がかかる

建設業許可を取得する際に費用がかかるのはもちろんですが、許可の有効期間は5年のため、許可を継続させたい場合には5年に一回、許可の更新手続きをすることになります。この際に手数料が発生します。

毎年決算報告書の提出義務が発生する

建設業の許可業者になると、毎年一回、決算変更届という手続きを行うことになるため、毎年必ず手続きが必要となります。

決算変更届は一年間の財務状況の報告と、工事経歴の報告を行うことになります。この手続きを行政書士に依頼すれば楽ですが、行政書士への報酬がかかります。 また、屋号や所在地が変わったり、電話番号・FAX番号等が変わったときには変更届という手続きが必要になります。

建設業許可の種類

建設業許可は大臣許可・知事許可、一般・特定の違いで申請すべき許可の種類が異なります。

例えば、「都道府県知事許可」の「一般建設業許可」のように、許可取得の目的によって組み合わせが変わります。 それでは、一つずつ説明します。

知事許可と大臣許可

建設業の許可には、知事許可(都道府県知事許可)と大臣許可(国土交通大臣許可)があります。

都道府県知事許可1つの都道府県内にだけ営業所を持ち、営業する場合は知事許可を受けます。
国土交通大臣許可2つ以上の都道府県に営業所を持ち、営業する場合は国土交通大臣許可を受けます。

※ここでいう「営業所」とは、建設業法上の営業所の要件を満たした営業所のことを指します。○○営業所や○○支店という名前を付けていても、建設業法上の「営業所」の要件を満たしていなければ、建設業法上の営業所には該当しません。

一般建設業と特定建設業

建設業の許可は、一般建設業と特定建設業に区分されています。何が違うのかというと、工事の一部を下請けに出す際の金額の大小で一般か特定かが分けられています。具体的には下図のとおりです。

特定建設業は下請けに出す金額が大きくなります。万が一、下請け会社にお金が支払われなくなると共倒れのリスクが大きいですよね。そこで、一般建設業よりも特定建設業は要件が厳しくなっています。

「特定建設業」で特に注意が必要なのは、「指定建設業」です。

次の7業種については、施工技術の総合性等を考慮して「指定建設業」と定められているため、特定建設業の許可を受けようとする者の専任技術者は、一定の国家資格者(基本的に一級の国家資格)、技術士の資格者又は国土交通大臣が認定した者でなければなりません。

①土木工事業、②建築工事業、③管工事業、④鋼構造物工事業、⑤舗装工事業、⑥電気工事業、⑦造園工事業

建設業許可をとるための要件

建設業許可を取得するには次の5つの要件を満たしている必要があります。

  • 経営業務管理責任者がいる
  • 専任技術者がいる
  • 誠実性の要件を満たしている
  • 財産的基礎の要件を満たしている
  • 欠格事由に該当していないこと

いずれの要件も満たしているかどうかの判断基準が細かく設定されているため、現状をしっかり確認する必要があります。

特に、①経営業務管理責任者がいる、②専任技術者がいる、③財産的基礎の要件を満たしている、の要件は非常に複雑で重要な要件となります。

経営業務管理責任者がいる

経営管理責任者とは、建設業について、経営の管理を適正に行うことができる方のことです。

具体的には、業務執行社員、取締役、個人事業主その他支店長,営業所長等の営業取引上対外的に責任を有する地位で、建設業の経営業務について合的に管理した経験を有する方となります。 次のような方が経営業務の管理責任者(経管)になれます。

  1. 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
    (例)建設会社の役員又は個人事業として5年以上の経験がある方
  2. 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務を管理した経験を有する者
    (例)建設会社で取締役会の決議により特定の事業部門に関して業務執行権限の委譲を受けた経験のある方(例えば執行役員だった方)
  3. 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
    (例)資金の調達、技術者及び技能者の配置、下請業者との契約の締結等の業務の補佐経験がある方

専任技術者がいる

専任技術者とは、適正な請負契約が締結されるよう技術的な観点で契約内容を確認し、その工事が契約通りに実行されるための役割を担う技術者のことです。

次のような方が専任技術者(専技)になれます。

一般建設業許可の場合

  1. 国家資格者
  2. 指定学科卒業+3年又は5年以上の実務経験がある方
  3. 10年以上の実務経験がある方

特定建設業許可の場合

  1. 一級の国家資格者
  2. 10年以上の実務経験+4,500万円以上の元請工事について2年以上の指導監督的実務経験のある方
    (※) 指定建設業と呼ばれる土木工事業,建築工事業,電気工事業,管工事業,鋼構造物工事業,舗装工事業,造園工事業についてはⅡのパターンは使えません。

※「指導監督的な実務の経験」とは、建設工事の設計又は施工の全般について、工事現場主任者又は工事現場監督者のような立場で工事の技術面を総合的に指導監督した経験をいいます。

誠実性の要件を満たしている

建設業許可を申請しようとする一人親方(個人事業)が、請負契約の締結又は履行の際における詐欺、脅迫、横領等の法律に違反する行為や、工事内容、工期等請負契約に違反する行為をする恐れが明らかな者でないことが条件となっています。

なお、建設業法、建築士法、宅地建物取引法等で「不正な行為」又は「不誠実な行為」を行ったことにより、免許等の取消処分を受け、又は営業の停止等の処分を受けて5年を経過しない者は、誠実性のない者として取り扱われますのでご注意ください。

財産的基礎の要件を満たしている

契約した工事を実際に施工するのに十分な財産的基礎がないと、施工が止まってしまったり、下請けにお金を払えなくなったりしますよね。そこで、請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していることが要件となっています。

今回は一人親方(個人事業)のお話なので、一般建設業許可の財産的基礎の紹介をします。

倒産することが明白でなく、かつ、次のいずれかに該当すること。

  1. (期首資本金+事業主借勘定+事業主利益)-事業主貸勘定+利益留保性引当金+準備金≧500万円であること。
  2. 500万円以上の資金調達能力があること(預金残高証明書で確認する)。

1には難しいことが書いてありますが、とにかく500万円以上の残高証明書を発行できればOKです。ちなみに、残高証明書は発行後1か月以内のものに限ります。

欠格事由に該当していないこと

次のいずれかに該当する場合は,許可を受けられませんのでご注意下さい。

⑴ 法人・法人の役員等,個人事業主・支配人,その他支店長・営業所長等が,次に掲げる事由に該当しているとき。

  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 不正の手段で許可を受けたこと等により,その許可を取り消されて5年を経過しない者
  • 許可の取消を逃れるために廃業の届出をしてから5年を経過しない者
  • 建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたとき,あるいは危害を及ぼすおそれが大であるとき,又は請負契約に関し不誠実な行為をしたこと等により営業の停止を命ぜられ,その停止の期間が経過しない者
  • 禁錮以上の刑に処せられその刑の執行を終わり,又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者(※執行猶予付きの場合は執行猶予が終わったらこの要件には該当しないことになります
  • 建設業法,建築基準法,労働基準法等の建設工事の施工等に関する法令のうち政令(建設業法施行令第3条の2)で定めるもの,若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,又は刑法等の一定の罪を犯し罰金刑に処せられ,刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  • 暴力団員等(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者)
  • 心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令(建設業法施行規則第8条の2)で定めるもの
  • 暴力団員等がその事業活動を支配する者

⑵ 許可申請書又はその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり,又は重要な事実の記載が欠けているとき。

許可を取った後に法人成りした場合はどうする?

一人親方として建設業許可を取った後に、法人化しようと考えた場合、一人親方として取得した許可はどうなるのでしょうか?法人化するわけですから、法人に引き継ぎたいですよね。

 この場合、引き継がせるために二つの方法があります。

  1.  法人として新たに新規許可申請をする
  2.  建設業許可の認可申請をする(新しい方法)

 法人として新たに新規許可申請をする

一人親方として新規許可申請をしたときと同じように、法人として改めて許可申請をする方法です。この場合、新規申請となりますので、改めて申請手数料を払う必要がありますし、行政書士に依頼する場合には行政書士への報酬も再度発生します。

建設業許可の認可申請をする(新しい方法)

認可申請は令和2年10月1日施工の建設業法改正から新たに認められた申請方法になります。法人化等、前の建設業者の地位をそのまま承継したい場合には、この認可申請をすることができます。認可申請の場合、申請手数料が0円であることがメリットとなります。

法人成りする方法

法人成りするには下記の様な法人設立の手続きをすることになります。
法人を設立するには、(電子)定款の作成、金融機関での資本金の払い込み、公証役場での定款の認証手続き、法務局での設立登記手続きを行う必要があります。

  • 定款作成
  • 資本金の払込
  • 定款認証(合同会社の場合は不要)
  • 設立登記

また、法人登記が完了してからも、下記のような手続きが必要となります。
全ての手続きが完了して、不都合なく会社の運営ができるまでに大体1か月は見ておくと良いです。

  • 設立届の提出(税務署・都道府県・市町村)
  • 社会保険加入手続き
  • 労働保険加入手続き
  • 金融機関で口座開設
  • 法人クレカの作成
  • 契約関係を法人名義へ変更

などの手続きがあります。

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